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29歳でプログラマになった

 僕は新卒で2年務めた建設業界の大企業の営業職を退職して、29歳でITベンチャー企業に入社してプログラマになった。この世界に移ってから驚くことがとても多かったし、とても自由になった。このエントリは、働いていてどこか生きづらさを感じている人のために、何かのヒントになればと思って書いたものだ。

 情報や知識というのは武器だ。どんなに高性能のマシンを持っていても使い方を知らないと何の役にも立たないし、何かを知るだけで自分の周りの世界は変わることがある。

 ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法 

人生何がどうなるかわからない

 大学院を卒業してからは建設業界のある大企業で営業職をやってたんだけど、仕事をやっててあまりワクワクしなかったので2年で辞めてしまった。勉強が好きだったので大学院に戻って博士課程に進もうとしたんだけど、それも上手く行かなくて、どうしようかなーと思ってた時、ふと流れてきたエントリを読んだ。

 一歩踏み出してよかった

 プログラミングは全然やったことがなかったんだけど、このエントリを読んで興味を感じて、試しにWeb系(WebサイトやスマホアプリをつくるIT企業)で働く知り合いに業界の話を聞いてみることにした。都合の良い時に会社に遊びに来ていいよと言われたので遊びに行ったら、話が盛り上がってその場で採用されてしまったのだった。まさか自分がプログラマになるとは、1年前の自分だったら想像すらしていなかった。人生は本当によくわからないものだと思う。

 ネットにはプログラマは30歳未経験ではなれないとか35歳で定年とかいっぱい書かれてて不安だったんだけど、それは多分新卒でたくさん人を雇っている会社での場合であって、実際はそうじゃない人たちも結構いるってことがわかった。僕みたいな例は極端かもしれないけれど、もうあんまりひとつの会社で定年まで働くって時代でも無くなってきているし、バイト感覚でもっとフランクにいろんな会社に出入りできるようになればいいのになあと思う。

働きやすくなる仕組みをつくろう

 その会社は出来てから10年も経ってなくて本当に小さいベンチャー企業なんだけど、仕事はとても面白くて毎日通うのが楽しいし、環境にも恵まれていてとても自由だ。変なルールやしきたりやプレッシャーは全くなくて、ルールの代わりにみんなが働きやすくなる仕組みがいくつも導入されている。すごく融通がきくようになっているし、柔軟に会社が回っている。

 居心地がすごく良くて、会社に通ってるというよりなんか近所の喫茶店に行ってるような感じがする。喫茶店というのは、飲み物さえ頼めばあとは本を読んでもいいし話しててもいいしブログを書いててもいいしボーっとしててもいい仕組みを持った場所だ。そんな感じで人々の居場所をつくるときは、規則で行動を縛るのではなくて自由でいられる仕組みをつくってあげることが大事なんだと思う。

 組織にいる人が多くなればなるほど、いろんな問題が起こってきてそのぶん決まりが増えていく。歴史ある企業にルールの多さは避けられない。それでも折々でうまくメンテナンスをしてやって快適なルール体系にアップデートできていればいいんだけど、時代遅れだったり誰も幸せになれない決まりなどがそのまま数多く生き残ってしまっていることが今のこの国での働きにくさの一因になっていると思う。 

クリエイティブな環境で働く

  プログラマにとって音楽はとても大切な要素だ。プログラミングは正確さが問われる分集中力がかなり必要なので、2,3時間もPCに向かってると頭の中がグシャグシャになったり気分が落ち込んできたりしてしまうんだけど、BGMがあるとインスピレーションも湧いてノリノリでプログラミングできるしオフィスに開放感が生まれて良い。僕の会社にはミュージシャンがたくさんいるので、世界中のイケてる音楽を毎日流して教えてくれる。

 IT企業はオフィスの内装や設備にこだわっている会社も数多くある(例: http://interiro.com/fassioinable-office-company-1047.html )。おしゃれな内装の美容院が多かったり、創作活動をする人がスタバに集まったりするのも同じことで、クリエイティブな発想はクリエイティブな環境から生まれやすい。廃校になった学校をオフィスとして使っている会社もあったりするくらいだ。

 まあいくら居心地が良くてもずっと部屋の中にいたらどうしても息がつまるので、1時間に1回は外に出るようにしている。緑を見ながら散歩するといい気分転換になるし、いいアイデアも思いつきやすいのでオススメだ。

満員電車からうまく逃げよう

 僕は満員電車がとても苦手だ。満員電車が好きだという人はあまりいないだろうけど。冷静に考えなおしてみても、首都圏の満員電車はちょっと異常だと思う。ふつう自分の手を広げた範囲に人が近づくだけで「えっ」となるのに、それを許さなきゃいけないのは日常生活の中でも電車に乗ってる時くらいだろう。それが満員電車ともなれば、やっぱり相当なストレスになるはずで、毎日通勤のたびに精神をすり減らされるのはとても大変だった。

 満員電車を避けて働く方法としては、首都圏にない会社で働くというのが一番だと思うんだけど、僕の場合は実家も東京だし友達も東京に住んでて離れたくなかったので、東京圏なんだけど山手線に接続していない路線にある会社を選んだ。東京は23区を避けるだけでも電車はあまり混まなくなる。大企業はオフィスとかが何ヶ所にもあって自分では選べないケースが多いんだけど、小さな会社だとそんな心配はないので良い。

 あとIT企業はフレックスタイム制があるなど出社時間に融通がきくところが結構あって、そういう会社だとラッシュ時を避けて電車に乗ることができる。僕はやってないけどリモートワークといって、インターネットでうまく意思疎通とかデータの連携をとりながら自宅で働く人も結構いたりする。そんな工夫をしてあげると、東京にいながら満員電車に乗らないで働くことができる。

スーツ文化は無くなってしまうのかも

 僕はスーツもとても苦手で、スーツはカッコいいんだけど、スーツを着ているとなにか条件反射的に緊張して身体がガチガチに凝り固まってしまい、とても息苦しかった。今の職場は私服でリラックスして働けるのでとても嬉しい。

 スーツの職場で働いているとスーツが当たり前って思いがちなんだけど、実は午前9時をまわると、街や電車の中でスーツを着ている人を見つけるのはとたんに難しくなってしまう。世の中は意外と私服の人で回っている。僕の職場はみんな私服だし、客先訪問するときも私服だし、他のIT企業のブログを見ても私服の人ばっかりだ。僕の観測範囲からはスーツがすっかり消えてしまった。

 日本でスーツが着られるようになってからまだ100年ぐらいしか経ってないし、ITのような新しい時代の仕事がスーツではなく私服で働くことを選んだということは、これから生まれてくる新しい仕事でも私服でいいやって流れになるかもしれないし、この先数十年とか百年単位で世の中の仕事の新陳代謝が進んだ時には、もしかしたらスーツ文化は無くなってしまうのかもしれない。

アプリをつくった話

 僕はこんな感じでとても快適な環境で仕事ができていて、ときどき「こんなの作って」と頼まれてはWebサイトやスマホアプリをつくっている。(なお、その難易度はちょっとずつ上がるように巧妙に仕組まれていて、楽しいし飽きがこない。)

 大学では化学を学んでいたしプログラミングは授業での数時間以外ではほとんどやった事はなかったんだけど、swiftというプログラミング言語の入門書を渡されて1ヶ月勉強して、その後試行錯誤しながら1ヶ月かけて「たすくボイス」というiPadのアプリをつくることができた。

たすくボイス

たすくボイス

  • Info Lounge LLC
  • 教育
  • ¥5,000

  声でのコミュニケーションが難しい人のためのアプリで、大きな50音キーボードでタッチしてつくった文章を合成音声が読み上げてくれる、というものだ。とてもシンプルなアプリなんだけど、その分サクサク動いてくれるところが気に入っている。

 医療・介護用につくったんだけど、製品はどんな使われ方をするのかを製作者は想定しきれないところがあって、このアプリも用途は他にもいろいろあるのかもしれない。日本語を学ぶ幼児や、外国の方にも使ってもらえるしれない。ひらがなを1音1音タッチするたびに読み上げてくれるのでちょっとおもちゃっぽい側面があって、先日は僕の1歳の甥っ子のお気に入りになっていたようだ。

 と言うようにちょっとしたプログラミングをして楽しいしお金もちょっともらえる、という毎日を送っている。ずっとこんな暮らしが続けばいいのに。

小さくておもしろい会社をどう見つけるか

 この会社に入るときに志望動機を一切聞かれなかった。まあ知り合い同士だしそんなものなのかなと思ってたんだけど、実はそうじゃなくて「(うちみたいに小さい会社に)来てくれるだけでもありがたいので、志望動機なんてとても聞けない」ということを後から聞いた。この話を聞いた時、難しい問題だなと思った。

 大学生の就職活動なんて、自分が名前を聞いたことのある企業(≒大企業)にしか応募しないし、合同説明会などを通して偶然知ることができる企業も大企業ばっかりだ。小さい企業に行こうという発想自体がまず浮かびにくい。

河野:

それは「会社」というものについても言えることだと思うんです。世のなかには知られてないけどすごくおもしろいことをやっている会社って本当にたくさんありますから。

糸井:

小泉元総理が見学に行った極細の注射針をつくってるような会社とか、小さくてもおもしろい企業って探せばたくさん出てくるんですよね。

河野:

ええ、たくさんあります。でも、普通に就職活動をしている学生さんたちにとってそういうおもしろい会社を見つけ出すのは、やはり難しいんです。

糸井:

ようするに、小さくてもおもしろくて自分のやりたいことができる会社がどこにあるのか分からない、と。

ほぼ日刊イトイ新聞-「ほぼ日」の就職論。

  ではどうやってその小さくておもしろくて自分のやりたいことができる会社を見つけられるのだろう。一番多くて頼りになるのはやっぱり友人知人のツテだ。最近聞いた調査によると優秀なITエンジニアであるほど縁故採用が多いらしい。あと専門学校とか職業訓練校で情報が回ってくることもあるみたいだ。

 Web系なんかだと割とフランクにブログで自分の会社の求人をしてたりするし、最近ではWantedlyみたいに小さい会社に特化しててイケてる就活サイトもあったりする。行きたいところが無いなら作ってしまうぜ、となって会社の元同僚が何人かで集まって起業するみたいな話も全然珍しくない。

お金に縛られない

 小さな会社で働くことにデメリットはないのかと言われると、それはやっぱりお金の問題だ。大企業は大きな仕事を回すことで生きているので、その分給料や福利厚生はすごい。お金がどうしても必要な人は、やっぱり大企業で働いたほうがいいと思う。

 ただ僕の話をすると、お金は必要なんだけど、必要なぶんだけあればいいかなと思っている。いまは養う人もいないし、実家暮らしなので衣食住にあまりお金がかからないし、車も乗らないし。物欲もあまりないし、基本的に年中寝て暮らしていて幸せを感じている人間だし、趣味はあるけど将棋(ニコニコで見れる)と相撲(テレビで見れる)と音楽(Apple Musicで聴ける)で、どれもお金がかからないというかかけようのないものばっかりだ。それに加えて最近はこうしてブログを書いていると楽しくて1日があっという間に過ぎてしまう。

 小学生や中学生の頃を思いだしてみると、あの頃はお金なんてちっとも持ってなかったけど、不自由など感じることなくいろんな事をやれてた気がする。でも、人はひとたびお金を使うことに慣れてしまうとお金を使う生活が当たり前になってしまう。お金があることで実現できる幸せもたくさんあるけれど、もしかしたらそれはある種の呪いなのかもしれない。

まとめ:働きかたをアップデートしていこう

 変化の速い現代では二十年ごとくらいに社会状況や人間の生き方がかなり変わってしまうから、みんな親の世代とはずいぶん違う社会を生きることになる。だから新しい社会状況に合わせるために価値観やライフスタイルを次々と更新していかないといけないんだけど、今の日本ではその入れ替わりがうまくいっていないのだと思う。(...)そうだとしたら、現状に合わない古い価値観は徐々に捨てていって、新しい生き方を探っていく必要があるだろう。

 持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない

  このエントリでは実体験をもとに、新しい働きかたを実践するITベンチャー企業の例を取り上げたけど、だからと言ってIT業界すごい!とかみんなベンチャーに来ようよ!みたいなことを言いたいわけではなかった。他の業態でもこういった動きは出てきているだろうし、もっと洗練された働きかたがどこかにあると思う。

 大事なのは、時代に合った形に働きかたをアップデートしていくことだ。文明はどんどん発達していて、便利なツールもたくさん揃っている。何か方法はあるはずだ。いま働いていてどこか生きづらさを感じている人は、自分の働きかたを見直す時期に来ているのかもしれない。

追記(2017/3/17)

 このエントリを書いてから2年後に考えたことをエントリにしました。こちらも合わせてよろしくお願いします。

msms.hatenablog.jp